大会社の経理 ― みなと精機ストーリー 姉妹編:MBO総合ガイド
読み物型学習教材

「大会社」というルールを、
一社の非公開化で追体験する。

東証プライムに上場していた精密機械メーカーが、MBOで非公開会社になる。 その前後で、会社法上の「大会社」に関わる経理・開示のルールは何が変わり、何が変わらなかったのか。 架空企業「みなと精機株式会社」の物語を軸に、制度の全体像と変化の勘所をつかむ。

本教材は「大会社」制度の全体像を掴むことに徹しています。MBOの手続き(特別委員会、TOB、スクイーズアウト等)そのものの詳細は、姉妹編「MBO総合ガイド」に譲ります。物語パートは文脈をつくるためのフックであり、法律・会計の解説を薄めるものではありません。
序章

みなと精機株式会社のプロフィール

この会社はなぜ「大会社」なのか。数字から確認する。

この章で学ぶこと
  • 会社法上の「大会社」の定義(資本金基準・負債基準)
  • 大会社の判定が「資本金 または 負債」のOR条件であること
STORY

みなと精機株式会社は、精密機械(産業用センサー・光学部品)を手がけるメーカーである。東証プライム市場に上場し、資本金は50億円。国内外の自動車・半導体メーカーを主要顧客とし、堅実な財務基盤で知られていた。

物語の後半、みなと精機は、経営陣と投資ファンドが設立した買収の受け皿会社(SPC)による買収を経て、上場を廃止する。買収資金の大部分はSPCが金融機関から借り入れたもの(かりいれ)だが、買収完了後にSPCとみなと精機が合併したことで、この借入はみなと精機自身の負債となり、単体貸借対照表の負債合計は1,300億円を超える水準に膨らむ。

※本教材では、この合併後のみなと精機単体の貸借対照表を前提に話を進める。SPCの借入が自動的に対象会社の負債になるわけではなく、合併という別の出来事を経て承継された、という点を押さえておきたい。

社名
みなと精機株式会社
業種
精密機械メーカー
上場市場
東証プライム
(物語の途中でMBOにより上場廃止)
資本金 上場時
50億円
負債合計 MBO・SPCとの合併後(単体)
1,300億円超
承継した買収借入が中心
上場時の機関設計
監査役会設置会社
+会計監査人設置会社
POINT

大会社の定義は「資本金」か「負債」、どちらかで足りる

会社法上の「大会社」とは、①最終事業年度の貸借対照表上の資本金が5億円以上、または ②同じく負債合計が200億円以上、のいずれかを満たす株式会社をいう。「かつ」ではなく「または」である点が重要で、どちらか一方の基準以上であれば大会社としての規律(会計監査人の設置義務、連結計算書類や決算公告に関する特則など)が及ぶ。

みなと精機は、上場時点で資本金50億円と資本金基準(5億円以上)を大きく超えており、この時点で既に大会社である。MBO後、SPCとの合併で買収借入を承継した後は、その借入が計上された貸借対照表が判定用となった時点から、資本金の水準にかかわらず、負債合計1,300億円超という負債基準の面でも大会社に該当する。なお、大会社かどうかは「最終事業年度に係る貸借対照表」(2条6号・24号)で判定するため、借入が計上された事業年度の計算書類が確定した後に、負債基準での該当が判定に反映される。つまりこの会社は、上場中も非公開化後も、常に大会社であり続ける運命にある——という前提が、この物語全体を貫く軸になる。

会社法2条6号・24号
大会社判定:OR(または) 判定に使うのは「最終事業年度に係る貸借対照表」(会社法2条6号・24号)
資本金5億円以上
ORまたはANDではない
負債合計200億円以上
大会社いずれか一方を満たせば該当
みなと精機・上場時 資本金50億円 ○ 資本金基準で該当
MBO・SPCとの合併後(単体) 負債1,300億円超 ○ 負債基準でも該当 借入が計上された事業年度の計算書類が確定し、その貸借対照表が判定用となった後
章末チェック
  • 大会社の判定基準は「資本金5億円以上」と「負債200億円以上」の2つで、いずれか一方を満たせば該当する
  • みなと精機は上場時は資本金基準で大会社。MBO後も、現時点では前期の貸借対照表の資本金基準で該当し、当期の貸借対照表が判定用となった後は負債基準でも該当する見込み
第Ⅰ部

上場企業だったころ

「大会社」であることに加えて「公開会社」であり、「有価証券報告書提出会社」でもあったことが、この時期のルールを決めていた。

この章で学ぶこと
  • 大会社かつ公開会社(監査役型)に課される機関設計(監査役会+会計監査人)。委員会型は別
  • 取締役会が負う内部統制システムの基本方針決定義務と、J-SOXとの関係
  • 有価証券報告書提出会社に対する決算公告義務の適用除外
  • 大会社かつ有報提出会社に課される連結計算書類の作成義務
1監査役会+会計監査人は、なぜ必須だったか
STORY

みなと精機の株主総会招集通知には、毎年「監査役会」と「会計監査人」の名が並ぶ。経理部の新任担当者が「なぜウチは監査役会まで置いているのか」と尋ねると、先輩はこう答えた。「大会社で公開会社、しかもウチは監査役を置く型を採っているからだよ。この組み合わせだと、監査役会と会計監査人の両方が必要になる。委員会型に切り替えるという別の道もあるけれど、ウチはずっと監査役型なんだ」。

POINT

大会社×公開会社×監査役型なら、監査役会と会計監査人が必要になる

会社法328条1項は、大会社であって公開会社であるもの(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除く)は、監査役会および会計監査人を置かなければならないと定める。みなと精機は大会社かつ公開会社で、監査役を置く型を採っていたため、監査役会と会計監査人の両方が必要だった。ただし、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社という委員会型を選べば、監査役会を置かない機関設計も可能である(その場合も会計監査人は必要。327条5項)。「選べない」のではなく、「監査役型を選ぶ以上は両方必要」というのが正確な整理である。

ここで注意したいのは、「公開会社」という言葉の意味である。会社法2条5号の公開会社とは、発行する株式の全部または一部について、譲渡制限(譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定め)を設けていない会社をいう。世間一般でいう「上場会社」とは似て非なる概念で、非上場であっても株式の譲渡制限がなければ公開会社に該当しうる。みなと精機は上場会社であり、当然ながら譲渡制限のない株式を発行しているため公開会社でもあったが、「公開会社=上場会社」という理解は正確ではない点は押さえておきたい。

会社法2条5号 会社法327条5項 会社法328条1項
上場時の機関設計:3つの条件の組み合わせみなと精機が選んでいた監査役型。公開会社と上場会社は同義ではない。
大会社
+
公開会社
+
監査役型
↓
監査役会 + 会計監査人
両方が必要
別ルート:委員会型
監査等委員会設置会社 / 指名委員会等設置会社
監査役会を置かない機関設計。会計監査人は必要。
2取締役会が決めていた内部統制の基本方針
STORY

毎年度はじめの取締役会では、「内部統制システムの基本方針」の確認が定例議題になっていた。経理部門はその中の「情報の保存管理」と「企業集団の業務適正確保」の項目に、決算資料や関係会社管理の実務が紐づいていることを知っていた。加えて、みなと精機は上場会社として、金融商品取引法上の内部統制報告書(いわゆるJ-SOX)の作成・提出にも毎期追われていた。

POINT

大会社の取締役会には、内部統制の基本方針を決める義務がある

会社法362条4項6号は、取締役の職務執行が法令・定款に適合することを確保する体制その他業務の適正を確保するために必要な体制の整備を、取締役会の決議事項として挙げる。さらに362条5項は、大会社である取締役会設置会社について、この基本方針の決定を義務としている。

具体的な項目は会社法施行規則100条が定めており、代表的なものは次の5つに整理できる。

  • 情報の保存・管理に関する体制
  • 損失の危険(リスク)の管理に関する体制
  • 職務の効率的執行を確保する体制
  • 使用人の職務執行が法令等に適合することを確保する体制(コンプライアンス体制)
  • 企業集団(親会社・子会社)における業務の適正を確保する体制

これは会社法上の義務であり、上場・非上場を問わず大会社であれば発生する。一方、上場会社が別途対応していたJ-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告書制度)は、財務報告の信頼性確保を目的とした金商法上の制度であり、法的根拠も対象範囲も会社法の基本方針決定義務とは異なる。両者は似た言葉で語られがちだが、別の法律に基づく別の制度である。

会社法362条4項6号 会社法362条5項 会社法施行規則100条
会社法内部統制とJ-SOX:独立した2つの制度法的根拠と対象範囲を、それぞれ確認する。
会社法内部統制システムの基本方針大会社である取締役会設置会社非公開化後も継続
金融商品取引法J-SOX(内部統制報告制度)有価証券報告書提出会社のうち、上場会社等本ケース:当期は対象外有報提出義務の免除とは別に、対象年度を法務が確認済み。
3決算公告をしていなかった理由
STORY

経理部の若手が「大会社は決算公告が必要なはずでは」と有価証券報告書の作成中にふと疑問を持った。しかし、みなと精機が官報や日刊紙で決算公告を出している様子はない。上司に聞くと、「ウチは有報を出しているから、決算公告は要らないんだよ」という答えが返ってきた。

POINT

有価証券報告書の提出が、決算公告義務を代替する

会社法440条1項は、株式会社に対し、定時株主総会の終結後遅滞なく貸借対照表(大会社は貸借対照表および損益計算書)を公告するよう義務づけている。しかし同条4項は、金融商品取引法に基づき有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社については、この決算公告義務の適用を除外している。

有価証券報告書は決算公告よりもはるかに詳細な情報開示であり、既に十分な開示がなされているという理由から、重複した公告義務を課さない扱いになっている。みなと精機は上場会社として有報提出義務を負っていたため、この適用除外に当てはまり、決算公告を行っていなかった。

会社法440条4項
4毎年、連結計算書類を作る義務があったこと
STORY

決算期になると、経理部は子会社・関係会社の数値を集約し、連結計算書類を作成する。これは金融商品取引法上の連結財務諸表とは別に、会社法上も作成が求められているものだと、経理部長は新人研修で説明していた。

POINT

大会社かつ有報提出会社には、連結計算書類の作成義務がある

会社法444条3項は、事業年度末において大会社であり、かつ金融商品取引法24条1項により有価証券報告書を提出しなければならない会社について、その事業年度の連結計算書類の作成を義務づけている。みなと精機はこの両方の条件を満たすため、毎期の連結計算書類の作成が法律上の義務であった。

なお前提知識として、会社法444条1項は、会計監査人設置会社であれば、この444条3項の義務の有無にかかわらず、連結計算書類を任意で作成できると定めている。つまり444条1項が「作ってもよい」という土台を用意し、444条3項が「大会社かつ有報提出会社は作らなければならない」という強制力を上乗せする構造になっている。この構造は、非公開化後の変化を理解するうえでの伏線になる。

会社法444条1項 会社法444条3項
章末まとめ
  • 大会社×公開会社×監査役型 → 監査役会+会計監査人が必須(328条1項。委員会型は除外)
  • 大会社の取締役会 → 内部統制の基本方針決定義務あり(362条4項6号・5項)。J-SOXは別制度
  • 有報提出会社 → 決算公告義務は適用除外(440条4項)
  • 大会社×有報提出会社 → 連結計算書類の作成義務あり(444条3項)
転換点

MBOの発表

STORY

ある日、みなと精機の経営陣は投資ファンドと共同で、自社を非公開化するMBOを発表した。特別委員会が設置され、独立した助言者のもとで公正性が検証される。株主に向けたTOBが実施され、最終的には臨時株主総会の決議を経て、みなと精機は東証プライムから姿を消すことになった。

その後、みなと精機には次の出来事が順に起きる。①上場廃止(取引所での上場状態が終わる)、②スクイーズアウトによる株主構成の変化(株主が買収の受け皿会社1社になる)、③全株式に譲渡制限を設ける定款変更(会社法上の「公開会社」でなくなる)、④有価証券報告書提出義務の免除承認(金商法上の開示義務が外れる)。これらは同じ日に起きるわけではなく、それぞれが別のルールに影響する。

買収資金の大半は、受け皿会社(SPC)が金融機関から借り入れて調達した。買収完了後、SPCはみなと精機と合併し、この借入はみなと精機の負債として承継される。ここから、非公開化後のみなと精機の負債構成は大きく変わることになる。

MBO・非公開化の時系列 この物語の順序。これらは同じ日に起きるわけではなく、それぞれが別のルールに影響する。
  1. MBO・上場廃止
    1. 取引01MBO発表
    2. 金商法02TOB買収資金の大半:SPCが金融機関から借入
    3. 取引所03上場廃止取引所での上場状態が終わる
  2. 株式・開示
    1. 会社法04スクイーズアウト株主が買収の受け皿会社1社になる
    2. 会社法05全株式に譲渡制限定款変更 → 公開会社でなくなる
    3. 金商法06有価証券報告書提出義務の免除承認
  3. 合併・借入承継
    1. 会社法・財務 07SPCとみなと精機の合併
      合併により 買収借入を
      みなと精機が承継
      みなと精機単体の負債合計
      1,300億円超
NOTE

MBOのプロセス自体は、この教材の主題ではない

経営陣・特別委員会・TOB・スクイーズアウトといったMBOの手続きの公正性や法規制については、姉妹編「MBO総合ガイド」が詳しく扱っている。本教材が主題とするのは、この非公開化という出来事の前後で、大会社としての経理・開示ルールがどう変わるか、という一点である。

次章では、非公開会社になったみなと精機で、機関設計・内部統制・決算公告・連結計算書類のそれぞれに何が起きたかを見ていく。

第Ⅱ部

非公開会社になったあと

「大会社」であることは変わらない。しかし、上場廃止、全株式への譲渡制限(=公開会社でなくなる)、株主構成の変化、有価証券報告書提出義務の免除——これらは別々の出来事であり、起きる時期も法的根拠も異なる。この章では、それぞれの変化がどのルールに効いてくるかを分けて見ていく。

この章で学ぶこと
  • 非公開の大会社に求められる機関設計の選択肢
  • 減資の目的・手続と、大会社判定への影響(OR条件の再確認)
  • 内部統制の基本方針決定義務は残ること/J-SOX対象からは外れること
  • 決算公告義務が復活する理由
  • 連結計算書類の法定作成義務が消える一方での実務判断
上場時から非公開化後へ:残る義務・変わる義務本ケースの見取り図:全株式に譲渡制限を設定し、有報免除・J-SOX対象外を当期について確認済み。大会社・監査役型を継続。
監査役会上場時必須→非公開化後任意
会計監査人上場時必須→非公開化後必須
会社法内部統制上場時必要→非公開化後継続
J-SOX上場時対象→非公開化後対象外
決算公告上場時適用除外→非公開化後原則必要
連結計算書類上場時法定義務→非公開化後任意作成可能
監査役会を廃止しても監査役は必要。各変化の時期・要件は、この章の本文で確認する。
1監査役会は維持する? 廃止しても、監査役は残る
STORY

上場廃止から数か月後、法務部から経理部に相談が来た。「非公開になったので、監査役会を維持するかどうか、取締役会で議論することになった」。少数株主がいなくなり、意思決定のスピードを重視する声がある一方、金融機関からの大型借入を抱える以上、監査体制を緩めるべきではないという意見も根強い。

POINT

非公開の大会社でも、会計監査人と監査役は必要。見直せるのは「監査役会」

会社法328条2項は、大会社であって公開会社でないものは、会計監査人を置かなければならないと定める。みなと精機は非公開化により公開会社ではなくなったが、現時点では最終事業年度(前期)の貸借対照表の資本金50億円により大会社に該当するため、会計監査人の設置義務は残る。当期末の貸借対照表案では負債が1,320億円に達しており、当期の計算書類が法定の承認・報告を経て判定用となった後も、負債基準で該当する見込みである。

ここで混同しやすいのが「監査役会」と「監査役」である。非公開会社になれば、328条1項が求めていた監査役会の設置義務はなくなる。しかし、会計監査人設置会社には監査役を置かなければならない(327条3項)。つまり、監査役会を廃止することはできても、監査役そのものをなくすことはできない。「監査役会の廃止」と「監査役の廃止」は、まったく別の話である。

さらに、非公開会社であれば監査役の権限を会計監査に限定できる定めがあるが(389条1項)、この規定は会計監査人設置会社には適用されない。みなと精機は大会社である以上、監査役に業務監査の権限を残したまま、会計監査人との連携を続けることになる。

なお、これは監査役を置く型(監査役型)を採る場合の整理である。監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社を選べば、監査役は置かず、監査等委員会や監査委員会が監査を担う。いずれの型でも会計監査人は必要である(327条5項)。

監査に関わる機関の最低限の比較(監査関係の機関のみを抜き出したもの)

条件・選択した機関設計監査役監査役会会計監査人
公開の大会社・監査役型必要必要必要
非公開の大会社・監査役型必要法律上は必須でない必要
監査等委員会設置会社置かない置かない必要
指名委員会等設置会社置かない置かない必要

※この表は取締役会・委員会の構成、人数、社外要件などを網羅したものではない。

監査役会を維持するかどうかは、株主構成やガバナンス方針、金融機関との関係などを踏まえた経営判断であり、会社法が答えを用意しているわけではない。

会社法327条3項 会社法327条5項 会社法328条2項 会社法389条1項
2財務体質の見直しと減資の議論——資本金を減らしても、大会社はやめられない
STORY

非公開化した当期、みなと精機の財務担当役員は、資本金の額の減少(減資)を議題に挙げた。内容は、資本金50億円のうち49.2億円をその他資本剰余金に振り替える無償減資で、株主への払戻しも、欠損の填補も伴わない。目的は買収後の資本構成の見直しであり、税負担への影響も検討事項に挙がったが、法人住民税均等割は税法上の「資本金等の額」などで判定されるため、減資だけで軽減が確定するわけではないと税理士から釘を刺されていた。

経理部長は資料をまとめながら、ふと部下に問いかけた。「資本金を減らしたら、ウチはもう大会社じゃなくなるのか?」

部下はしばらく考えて答えた。「いいえ。判定は最終事業年度の貸借対照表で行いますし、当期末には負債が1,300億円を超える見込みですから、資本金をいくら下げても、大会社であることは変わらないはずです」。

POINT

減資は原則として特別決議と債権者保護手続を要する——ただし例外がある

資本金の額の減少は、株主総会の決議で減少額・準備金への振替の有無・効力発生日などを定めて行う(447条1項)。この決議は原則として特別決議である(309条2項9号)。ただし、定時株主総会で、減少額が法定の欠損の額を超えない減資を決める場合には普通決議で足りる(同号イ・ロ)。また、株式の発行と同時に減資し、効力発生後の資本金が従前を下回らない場合には取締役会の決議で行える(447条3項。当社は取締役会設置会社)。本ケースの減資は欠損填補を伴わないため、欠損額による例外は使わない。

あわせて、会社法449条の債権者保護手続が必要になる。会社は、資本金の額の減少に異議のある債権者が申し出ることができる旨を官報で公告し、知れている債権者には個別に催告しなければならない(一定の要件のもとで個別催告を省略できる場合はある)。異議を述べることができる期間は1か月を下回ることができない。減資は株主総会の決議だけで完結せず、外部の債権者の利益にも配慮した手続を経て初めて効力を生じる。なお、欠損填補を目的とする減資であっても、資本金の額の減少である以上、449条の債権者保護手続は必要である。

会社法447条1項・3項 会社法309条2項9号 会社法449条
この章の学びのポイント

資本金をどれだけ引き下げても、大会社かどうかは「最終事業年度に係る貸借対照表」(2条6号・24号)で判定される。当期末に負債合計が1,300億円を超える見込みであれば、その計算書類が承認等を経て判定用となった後は負債基準で大会社に該当し、減資は判定を変えない。大会社の判定基準は「資本金5億円以上」または「負債200億円以上」であり、一方の基準が外れても、もう一方の基準を満たしていれば規律は外れない。

減資しても大会社:OR条件は変わらない現時点は前期の判定用B/S(資本金50億円)で該当。以下は、当期の計算書類が承認等を経て判定用となった後の見込み。
資本金50億円↓減資0.8億円1億円未満× 資本金基準では非該当
OR一方を満たせば該当
負債1,300億円超↓200億円以上○ 負債基準で該当
↓
大会社のまま「最終事業年度に係る貸借対照表」で判定
3内部統制の基本方針は残る、J-SOXは外れる
STORY

上場していた頃、決算期末になると内部統制報告書の作成に追われていた経理部だが、非公開化後の最初の期末は拍子抜けするほど静かだった。「J-SOX対応がなくなった分、少し楽になった」と誰かが漏らす。しかし取締役会の議題からは、内部統制の基本方針の確認が消えていなかった。

POINT

会社法上の義務は大会社である限り残る/J-SOXは金商法の制度

内部統制システムの基本方針決定義務(362条4項6号・5項)は、公開会社かどうかではなく、大会社かどうかで発生する会社法上の義務である。みなと精機は非公開化後も大会社であり続ける(現時点では前期の貸借対照表の資本金基準で該当し、当期の貸借対照表が判定用となった後は負債基準でも該当する見込み)ため、この義務は変わらず取締役会に残る。

一方、J-SOX(内部統制報告書制度)は、金融商品取引法24条の4の4第1項に基づく制度で、対象は「有価証券報告書提出会社のうち、上場有価証券の発行者その他政令で定めるもの」(いわゆる上場会社等)である。有報を提出しているからといって全社がJ-SOXの対象になるわけではない。みなと精機は上場廃止により上場有価証券の発行者でなくなる。どの事業年度の内部統制報告書から対象外になるかは、上場廃止日から機械的に決まるものではなく、金商法・施行令に基づき対象有価証券と対象年度を確認して判定する。本教材のケースでは、非公開化した当期分の内部統制報告書が対象外であることを法務が別途確認済み、という前提を置く(実務演習編D04)。

ただし、J-SOXの提出義務がなくなることと、日常の承認・牽制・証拠保存をやめてよいことは別である。会社法上の内部統制の基本方針決定義務は大会社である限り残り、金融機関との契約上も内部管理体制の維持が求められる。「会社法上の内部統制」と「金商法上のJ-SOX」は独立した制度であり、片方が外れてももう片方が自動的に外れるわけではない、という第Ⅰ部の整理が、ここで裏返しの形で効いてくる。

会社法362条4項6号 会社法362条5項 金融商品取引法24条の4の4第1項
4「去年まで公告していなかったのに」――決算公告義務の復活
STORY

非公開化後、最初の定時株主総会が終わったあと、経理部の若手が官報公告の手配をめぐって混乱した。「昨年までウチは決算公告なんてしていなかったはずですが」。総務担当が説明する。「有報を出さなくなったから、原則どおり公告が必要になったんだよ。大会社だからね」。

POINT

有報提出義務の免除により、440条1項の原則が戻ってくる

上場していた頃、みなと精機は有価証券報告書の提出義務を負っていたため、会社法440条4項により決算公告義務の適用が除外されていた。有価証券報告書提出義務の免除承認を受け、有報を提出しなくてよくなると、この適用除外の前提が失われ、440条1項の原則が戻ってくる(免除の仕組みは下のDEEP DIVEで扱う)。大会社であるみなと精機は、貸借対照表に加えて損益計算書も公告しなければならない。

「非公開化したのだから開示は減るはず」という直感は、決算公告に関してはむしろ逆に働く。有報という詳細な開示がなくなった分、決算公告という会社法上の最低限の開示が前面に出てくる、という構造を理解しておきたい。

公告の方法は定款の定めによる(939条)。本ケースは官報なので、貸借対照表・損益計算書の要旨を公告する(440条2項)。電子公告の場合は全文の掲載が必要で、定時総会終結日後5年間の継続掲載が求められる(940条1項2号)。公告方法が官報・日刊新聞紙である会社については、貸借対照表等をウェブサイトで5年間開示する措置により公告に代えることができる(440条3項)。これは法定の電子公告(939条)とは別の制度である。方法によって取扱いが異なるため、「電子公告なら要旨でよい」とは読まない。

会社法440条1項 会社法440条2項・3項 会社法939条 会社法940条1項2号
▶ DEEP DIVE 実務の深掘り:有報提出義務は"自動では"消えない

金商法24条1項は、有価証券報告書の提出義務が生じる有価証券を号ごとに列挙している。上場していた頃のみなと精機株式は、1号(金融商品取引所に上場されている有価証券)に該当していた。

一方、みなと精機がIPOの際に募集・売出しについて有価証券届出書を提出した株式は、上場廃止によって1号・2号に該当しなくなった後、3号(募集・売出しに際して発行開示の規定の適用を受けた有価証券)に基づく提出義務が残り得る。3号そのものには「現在の株主数が一定数以上」という要件はない。したがって、スクイーズアウトで株主が減っただけでは、3号の義務は自動的には消えない。

3号の義務から外れる道は24条1項ただし書に用意されており、代表的なものは次の二つである。

  • 300名経路:発行者が報告書提出開始年度の終了後5年を経過しており、当該事業年度末およびその開始日前4年以内に開始した各事業年度末の所有者数がいずれも政令で定める数(300名)に満たず、かつ内閣総理大臣の承認を受けた場合(対象有価証券の種類などの条件もある)
  • 施行令4条の経路(本ケースは所有者25名未満):清算中である、相当期間事業を休止している、または所有者数が25名未満であるなど、政令・府令で定める事情があり、内閣総理大臣の承認を受けた場合(金商法施行令4条2項3号、企業内容等の開示に関する内閣府令16条2項)。人数の算定時点(同府令16条3項)、申請日と対象年度の関係(施行令4条2項)、承認の条件となる書類の提出(同条3項)にも定めがある

MBO後のみなと精機は、スクイーズアウトにより株主が受け皿会社1社になるため、25名経路で承認を申請することが実務上の典型である。ただし、どの経路を使えるかは株主数の推移や届出書の提出歴によって変わるため、自社の経路は法務・証券代行と確認する。承認の権限は内閣総理大臣から金融庁長官に委任されている(194条の7)。

つまり、「上場廃止=有報提出義務の即日消滅」ではない。免除の承認は「どの事業年度に係る有報から提出しなくてよいか」を対象として与えられるため、440条4項の適用除外がいつ外れるかは、承認日そのものではなく、承認の対象となった事業年度と、その事業年度の定時株主総会の時点を見て確認する。ここを承認日だけで判断すると、決算公告をすべき年度を一年間見落とす、あるいは逆に不要な年度に公告してしまうことになりかねない。

会社法440条1項・4項 金融商品取引法24条1項 金融商品取引法施行令4条 企業内容等の開示に関する内閣府令16条
CHECK

問1:みなと精機は東証プライムを上場廃止した。この時点で、金商法上の有価証券報告書の提出義務はどうなるか。

正解:b
金商法24条1項は該当理由が複数あり、上場廃止で失われるのは「上場有価証券」としての理由のみ。過去の届出書に基づく理由が残っていれば、別途、金融庁長官の承認を得て初めて免除される。

問2:みなと精機は当期11月20日に有価証券報告書提出義務の免除承認を受けた。この事実だけから、決算公告義務(440条1項)が生じる最初の事業年度を確定できるか。

正解:c
440条4項の適用除外は「有報を提出しなければならない会社」であることが前提。免除承認は対象となる事業年度を特定して与えられるため、承認日だけでは、どの決算期から公告義務が生じるかは確定できない。承認書の内容と法務の確認メモを見て、対象期を特定するのが正しい手順である。
5連結計算書類は作らなくてよくなったが……
STORY

非公開化後の決算方針会議で、経理部長は財務担当役員に確認した。「法律上、連結計算書類の作成義務はなくなりました。それでも作り続けますか」。財務担当役員は即答した。「作ってくれ。借入のシンジケート団に、連結ベースの財務情報を求められている」。

POINT

法定義務は消えても、任意作成の土台は残る

会社法444条3項の連結計算書類作成義務は、大会社かつ有価証券報告書提出会社であることを要件とする。みなと精機が有報提出義務の免除承認を受け、事業年度末において有報提出会社でなくなれば、この法定義務は消滅する。上場廃止した年度に直ちに消えるわけではなく、免除がどの事業年度から効くかを確認する必要がある。

しかし、みなと精機は会計監査人設置会社であり続けるため、444条1項に基づき連結計算書類を任意で作成することは引き続き可能である。買収資金の返済原資を監視する金融機関に対する説明責任や、グループ全体の経営管理の必要性から、法定義務がなくなった後も連結計算書類の作成を継続するという実務判断は、大型の借入を抱える非公開会社では珍しくない。

ただし、444条1項の連結計算書類を作成することを選ぶと、同条4〜7項の監査(会計監査人・監査役)、取締役会承認、株主への提供、定時総会への報告が伴う。金融機関との契約で求められる連結資料を作ることと、会社法の連結計算書類を作ることは同一ではなく、契約の定義(実務演習編D05・別紙A)を確認して決める。

会社法444条1項 会社法444条3項 会社法444条4〜7項
章末まとめ
  • 非公開の大会社 → 会計監査人は必須(328条2項)。監査役型なら監査役も必須で、監査役会は任意(327条3項)
  • 減資は原則として特別決議(309条2項9号・447条1項)+債権者保護手続(449条)。決議要件には例外あり。判定用B/Sの負債基準がある限り大会社であり続ける
  • 内部統制の基本方針決定義務は継続。J-SOXの対象は上場会社等(金商法24条の4の4第1項)で、対象年度は個別に判定。本ケースでは当期分が対象外であることを別途確認済み
  • 有報提出義務の免除承認により、決算公告義務が復活する(440条1項)
  • 連結計算書類の法定作成義務は有報免除に伴い消滅。444条1項の任意作成は可能だが、選べば4〜7項の監査・承認・提供・報告が伴う
終章

変わったこと、変わらなかったこと

みなと精機の非公開化を、4つの軸でふりかえる。

項目上場企業だった頃非公開会社になったあと本ケースの前提:全株式に譲渡制限を設定済み。当期の有報提出義務の免除と、440条4項の不適用を確認済み(実務演習編D04)。「非公開化そのものの効果」と「有報免除に伴う効果」は別。
機関設計 監査役会+会計監査人が必須328条1項(大会社×公開会社×監査役型。委員会型は除外) 会計監査人は必須。監査役型では監査役も必須、監査役会は任意328条2項・327条3項(大会社×非公開会社)
内部統制 基本方針決定義務あり+J-SOX(内部統制報告書)対応あり362条4項6号・5項 基本方針決定義務は継続。J-SOXは対象外(本ケース:当期分について別途確認済み)362条4項6号・5項は不変/金商法24条の4の4第1項
決算公告 有報提出により適用除外・非公告440条4項 有報免除に伴い原則が戻る。B/S+P/Lの公告が必要に440条1項(有報免除の適用確認後)
連結計算書類 大会社×有報提出会社として作成義務あり444条3項 有報免除に伴い法定義務は消滅。444条1項の任意作成は可能(選べば4〜7項の手続が伴う)444条1項・4〜7項
経理担当者のための非公開化チェックリスト
  • 機関設計の見直し:監査役会を維持するか廃止するか。廃止しても監査役と会計監査人は必要(監査役型の場合)。定款変更・変更登記の要否を確認する
  • 決算公告の実務対応:公告方法と適用制度を確認する。本ケースの官報ではB/S・P/Lの要旨を準備する。電子公告ではB/S・P/Lの全文と継続掲載期間を確認する。440条3項の電磁的開示措置を採る場合は、その要件を別途確認する。外部委託先の要否も検討する
  • 内部統制:J-SOX対応リソースの整理と同時に、会社法上の基本方針が取締役会決議として維持されているかを確認する
  • 連結計算書類:法定義務消滅後も、金融機関や社内管理上の必要性から任意作成を続けるかを経営陣と協議する
  • 減資を検討する場合:目的の明確化(均等割の軽減は減資だけでは確定しない)、決議要件(原則特別決議・例外あり)のスケジュール、債権者保護手続(公告・催告・1か月以上の異議申述期間)の準備を進める
  • 大会社判定の再確認:現時点の判定根拠(最終事業年度の貸借対照表)と、次に判定用となる貸借対照表での見込み(負債基準)を分けて確認する。減資は判定を変えないことを前提に、以降の対応方針を組み立てる
実務演習編 Lesson 1

非公開化後、最初の決算。何を残し、何を始める?

読み物型の本編は「制度を理解する」パート。この演習は「資料を読んで判断する」パート。

みなと精機の3月決算が近づいています。財務担当役員(CFO)から、経理チームに次の依頼が届きました。

「上場をやめたので、今年は決算を軽くしたい。監査役会は廃止した。銀行からは連結の数字が欲しいと言われている。総会と公告を含め、今年やる仕事を1枚に整理してほしい。」

あなたの役割は、経理チームの決算担当責任者です。「去年と同じ」「非上場だから不要」という判断をせず、資料を読んで、必要な仕事を整理してください。

学習目標
  1. 会社の状態を「大会社/公開会社/上場/有報提出義務」の4つに分けて判定する
  2. 法定義務と、契約上の報告と、選択可能な事項を区別する
  3. 不足している資料を見抜き、確定した事項と確認が必要な事項を分けた決算方針メモを書く

所要時間の目安:25〜40分(実測前の目安)

注記

本レッスンは架空の演習ケースです。実在の企業・案件の判定を行うものではなく、法務・税務・会計の助言ではありません。

進捗
このブラウザに保存されます。他の端末には同期されません。
全8問(自動判定) 
    条件変更演習(本問の8問とは別枠) 

    状態は「未回答/未判定(再判定が必要)/回答済み(不正解・未完成)/合格・メモ完成」です。回答を変更すると判定は失効し、再判定が必要になります。答えを見ただけでは合格になりません。

    ケースの固定前提

    本レッスンでは「当期」を4月1日〜3月31日の事業年度とし、「前期」「翌期」をその前後の事業年度とする。

    項目演習条件
    法人みなと精機株式会社。判定対象はこの法人単体
    決算期3月31日
    上場当期9月30日に上場廃止
    株主構成当期10月10日、スクイーズアウトが完了し、株主は買収の受け皿会社(SPC)1社に
    公開会社該当性当期10月15日、全株式に譲渡制限を設ける定款変更が効力発生。同日、監査役会設置会社の定めを廃止
    有報提出義務当期11月20日に免除承認を取得。法務確認書(D04)により、当期に係る有報提出義務がなく、当期末・翌期の定時総会終結時点とも440条4項の適用を受けないことを本問では確定事実として与える
    J-SOX法務が別途、当期の内部統制報告書提出義務を確認済みで、当期は対象外との前提(D04)。免除承認日から推定した結論ではない
    合併当期12月1日、SPCがみなと精機に吸収合併され、SPCの買収借入をみなと精機が承継。以後の株主は経営陣・ファンドの持株会社1社(100%)
    機関設計取締役会+監査役1名+会計監査人。委員会型ではない。監査役会廃止等の手続は適法に完了済みという前提
    最終事業年度(前期)の承認済み単体B/S資本金50億円、負債180億円(買収借入の承継前)
    当期の無償減資当期1月15日、資本金を50億円から0.8億円へ減少。減少額49.2億円はその他資本剰余金へ振替。株主への払戻し・欠損填補なし。必要な手続は完了済みという前提
    当期末の単体B/S案資産1,600億円、負債1,320億円、純資産280億円。純資産の内訳:資本金0.8、その他資本剰余金69.2、繰越利益剰余金210
    公告方法定款で官報。440条3項の電磁的開示措置は採っていない
    連結子会社あり。銀行は「期末後90日以内の年次連結財務情報」を要求。用語の定義を定めた別紙Aは未提出
    監査・総会会計監査人は選任済み。最終の会計監査報告と監査役の監査報告はまだ受領していない。定時株主総会は翌期6月下旬を予定
    当期の時系列
    9/30上場廃止
    10/10スクイーズアウト完了
    10/15定款変更(譲渡制限・監査役会廃止)
    11/20有報免除承認
    12/1SPC吸収合併・借入承継
    1/15減資
    3/31当期末
    翌期6月定時株主総会

    ※負債1,320億円は合併により対象会社自身のB/Sに計上済みであることを確定事実として与える。合併の会計処理(取得会計等)の再現は本演習の範囲外であり、結果のB/S案を与える。

    学習者が開ける資料(D01〜D07)
    D01定款・登記事項(教材用抜粋)▶
    項目内容
    商号みなと精機株式会社
    事業年度毎年4月1日から翌年3月31日まで
    株式の譲渡制限当会社の発行する全部の株式について、譲渡による取得には取締役会の承認を要する(当期10月15日変更・同日効力発生)
    機関取締役会、監査役、会計監査人を置く。監査役会設置会社の定めは当期10月15日廃止
    公告方法官報に掲載してする
    資本金の額0.8億円(当期1月15日変更登記)
    D02最終事業年度(前期)の承認済み単体貸借対照表(抜粋、単位:億円)▶
    資産の部負債・純資産の部
    資産合計450負債合計180
    資本金50
    その他資本剰余金20
    繰越利益剰余金200
    純資産合計270

    ※前期の定時株主総会で承認済み。連結ではなく単体。買収借入の承継(当期12月1日)より前の数値。

    D03当期末 単体貸借対照表案・純資産の内訳(単位:億円)▶
    資産の部負債・純資産の部
    資産合計1,600負債合計1,320
    資本金0.8
    その他資本剰余金69.2
    繰越利益剰余金210
    純資産合計280

    ※未監査の案。合併による借入承継後、減資後の数値。0.8+69.2+210=280、1,320+280=1,600。

    D04法務部からの確認メモ(有価証券報告書・J-SOX)▶
    確認事項有価証券報告書内部統制報告書(J-SOX)
    根拠金商法24条1項ただし書に基づく提出義務免除の承認(当期11月20日付)金商法24条の4の4第1項の対象範囲
    対象期当期に係る有価証券報告書から提出義務なし当期は対象外
    会社法440条4項の適用当期末および翌期の定時株主総会終結時点において適用なし(=決算公告義務あり)—
    残存義務前期に係る有報は提出済み。臨時報告書等の残存義務なし会社法上の内部統制の基本方針決定義務は継続(362条5項)
    確認者法務部長・顧問弁護士法務部長・顧問弁護士

    ※両制度は別々に確認したもの。免除承認日から他方を推定していない。

    D05借入契約(シンジケートローン契約)報告条項の抜粋▶
    第○条(報告義務)
    借入人は、各事業年度の末日後90日以内に、当該事業年度に係る年次連結財務情報を貸付人に提出する。
    「年次連結財務情報」の定義および記載範囲は、別紙Aに定めるところによる。

    ※別紙Aは経理部に未提出。財務部が保管しているが、まだ共有されていない(演習上の意図的な情報不足であり、システム障害ではない)。

    D06経理担当の作業案(レビュー対象)⚠️ レビュー対象の作業案(誤りを含む)▶

    ⚠️ この資料は「レビュー対象の作業案」です。内容には誤り・根拠不足が含まれています。

    今年の決算方針(案)
    1. 上場しなくなったので、計算書類は貸借対照表と損益計算書だけ作ればよい。
    2. 監査役会がなくなったので、監査役による監査は省略できる。会計監査人の監査だけ受ける。
    3. 銀行から求められている連結の数字は、会社法の連結計算書類をそのまま出せばよい。
    D07監査の進捗表(当期末時点)▶
    項目状況
    会計監査人の期末監査実施中。主要な未解決事項:合併の会計処理、減資後の純資産の表示
    会計監査報告未受領。受領予定は翌期5月中旬
    監査役の監査報告未受領。会計監査報告受領後に作成予定
    監査意見の見込み現時点では不明
    設問

    問1:会社の状態を整理する

    問1-1(選択式・4項目)

    未回答

    当期末(3月31日)時点のみなと精機について、次の4つをそれぞれ判定してください。

    問1-2(選択式)

    未回答
    大会社の判定に使う資料として正しいものを1つ選んでください。

    問1-3(複数選択・自動判定)

    未回答
    「資本金が0.8億円になったから、もう大会社ではない」という意見があります。この意見への反論として正しいものをすべて選んでください。

    問2:D06の作業案をレビューする

    未回答

    D06の3つの記述について、それぞれ「正しい/誤り/根拠不足(確認が必要)」を選び、選択後に表示される解説と自分の判断を照らしてください。単に「間違い」で終わらせず、追加・継続する仕事を意識してください。

    問3:決算業務を分類する

    未回答

    次の12の仕事を、5つの分類のいずれかに置いてください(各行でプルダウン選択)。

    法定義務 法定義務ではないが契約上必要 選択可能だが選択後に手続が伴う 条件・資料の追加確認が必要 本問では対象外
    業務分類判定

    問4:決算カレンダーの抜けを埋める(誤り探し・自動判定)

    未回答

    経理担当が作成した当期の決算カレンダー案です。10行それぞれについて「正しい」「誤り」を選び、判定してください。

    問5:CFOへの判断メモを組み立てる(候補文の選択・自動採点)

    未回答

    CFOへの決算方針メモを組み立てます。以下の候補文から、メモに採用してよい文にチェックを入れてください。資料(D01〜D07)で裏付けられない文、法令の理解が誤っている文は採用してはいけません。

    観点配点
    A 会社の状態の判定20
    B 機関・監査・書類25
    C 法定義務と契約報告の区別20
    D 不足資料と判断保留20
    E 実行できる工程15
    模範模範メモを見る▶

    当期決算方針メモ(経理部→CFO)

    当社は上場廃止・非公開会社化しましたが、大会社への該当は継続します。現時点の判定は当社単体の最終事業年度(前期)の承認済みB/S(D02)で行い、資本金50億円により該当します。減資後の資本金0.8億円だけで判定することはできません。当期末B/S案(D03)の負債1,320億円は、当期の計算書類が承認(通常は株主総会の承認。439条の場合は取締役会の承認と定時総会への報告)を経て判定用のB/Sとなった後に負債基準の根拠となる見込みで、現時点では案です。

    監査役会廃止後も、現在の機関設計(取締役会・監査役・会計監査人)では監査役と会計監査人の両方が必要です。単体計算書類4書類、事業報告、各附属明細書を作成し、書類ごとの監査(計算書類は監査役・会計監査人、事業報告は監査役)、取締役会承認、株主への提供、定時株主総会の工程を維持します。計算書類を総会で報告事項として扱えるかは、最終の監査報告を受領後、439条の要件を確認して確定します。

    当期は有報提出義務がなく、440条4項の適用除外もないことを法務が確認済みのため、定時株主総会の終結後遅滞なく、官報にB/S・P/Lの要旨を公告します。掲載に必要な準備・予約は事前に進めます(上場中は公告していなかったため、初回になります)。

    銀行への年次連結財務情報は契約上必要ですが、会社法の連結計算書類と同一とは限りません。財務部に契約別紙Aの提出を依頼し、範囲・基準・監査要否を確定したうえで、444条1項による任意作成とするか、別途の契約報告資料とするかを決めます。

    J-SOXは当期対象外(法務確認済み)ですが、会社法上の内部統制の基本方針と、日常の承認・牽制・証拠保存は継続します。

    確認待ち:①会計監査報告(5月中旬予定)→受領後に監査役の監査報告(通知期限と合意日程を確認)→439条判定、②契約別紙A→連結資料の範囲確定。事業報告の監査日程は別途管理。

    問5の判定について

    12の必須文をすべて採用し、誤った文を1つも採用していないときに文の選択が完了します。そのうえで、6文の「根拠を確認」で必須資料をすべて選び、不要な資料を選んでいないときに「メモ完成」となり、コピーできるようになります。観点別の得点は学習到達の参考表示で、合格の条件ではありません。「監査役も不要」「上場廃止だけで有報不要」「未確認の契約要件を確定事実として書く」のいずれかを採用した場合は、要復習として強調表示します。

    問6:減資で現金は増えるか(数値・自動判定)

    未回答

    前提:減資前の純資産は、資本金50、その他資本剰余金20、繰越利益剰余金210(単位:億円、合計280)。当期1月15日に資本金を0.8億円に減らし、減少額49.2億円をその他資本剰余金に振り替えた。株主への払戻しも欠損填補も行わない。

    次を入力してください(単位:億円)。

    仕訳
    借方科目金額貸方科目金額
    条件変更演習(同じ資料で、条件を1つだけ変える)

    各条件は元のケースからの独立した分岐です。条件を1つだけ変えたとき、「判断する命題」の結論がどうなるかを選び、判定してください。ある条件の変更を別の条件に累積させないでください。

    進捗:条件変更
    このレッスンの根拠条文と確認状況
    条文命題確認状況
    会社法2条5号・6号・24号公開会社・大会社・最終事業年度の定義外部レビューで一次資料確認済み
    会社法319条・320条株主全員の書面同意によるみなし決議・みなし報告、319条5項の総会終結みなしe-Gov法令検索で確認済み(2026年9月12日)
    会社法327条3項・5項、328条1項・2項、389条1項機関設計外部レビューで一次資料確認済み
    会社法435条2項・4項計算書類の構成、10年保存外部レビューで一次資料確認済み
    会社法436条2項・3項、437条、438条2項・3項、439条監査・承認・提供・総会外部レビューで一次資料確認済み
    会社法440条1項・2項・3項・4項決算公告外部レビューで一次資料確認済み
    会社法442条計算書類等の備置き外部レビューで一次資料確認済み
    会社法444条1項・3項・4〜7項連結計算書類外部レビューで一次資料確認済み
    会社法447条1項資本金の額の減少外部レビューで一次資料確認済み
    会社計算規則27条1項1号本ケースの減資額(49.2億円)はその他資本剰余金へ。準備金に計上する場合は同号に調整があるe-Gov法令検索で確認済み(2026年9月12日)
    会社計算規則59条1項、61条、130条、132条、135条計算書類の構成、連結の構成、監査報告の通知期限、439条の要件59・61・135条は外部レビューで確認済み。130・132条はe-Gov法令検索で確認済み(2026年9月12日)
    会社法施行規則132条事業報告等の監査報告の通知期限e-Gov法令API(418M60000010012)で命題と条項を照合(2026年9月12日)
    会社法298条1項3・4号/299条1項本ケースは非公開の取締役会設置会社。実開催で書面・電子投票を採用しない場合は総会日の1週間前までに招集通知を発し、採用する場合は2週間前までに発するe-Gov法令API(417AC0000000086)で命題と条項を照合(2026年9月12日)
    会社法442条1項1号計算書類等の備置き開始日(実開催は定時総会の日の2週間前、319条1項の場合は提案があった日)から5年e-Gov法令API(417AC0000000086)で命題と条項を照合(2026年9月12日)
    金商法24条1項ただし書有報提出義務の免除条文確認済み
    金商法24条の4の4第1項内部統制報告書の対象外部レビューで一次資料確認済み
    巻末

    用語集・条文早見表

    物語を読まなくても、辞書的に参照できるまとめ。

    用語集
    大会社だいがいしゃ
    最終事業年度の資本金が5億円以上、または負債合計が200億円以上の株式会社(会社法2条6号)。いずれか一方を満たせば該当する。
    公開会社こうかいがいしゃ
    発行する株式の全部または一部に譲渡制限を設けていない会社(会社法2条5号)。「上場会社」とは別の概念。
    監査役会設置会社かんさやくかい せっちがいしゃ
    監査役会を置く旨を定款で定めた会社。大会社×公開会社では、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、設置が義務となる(328条1項)。
    会計監査人設置会社かいけいかんさにん せっちがいしゃ
    会計監査人を置く旨を定款で定めた会社。大会社は公開・非公開を問わず設置が義務となる(328条1項・2項。委員会型は327条5項)。会計監査人設置会社は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役を置く必要がある(327条3項)。両委員会型は監査役を置かず、各委員会が監査を担う(同条4項)。監査役型では、監査役の監査範囲を会計に限定することはできない(389条1項)。
    内部統制システムの基本方針ないぶとうせい きほんほうしん
    取締役の職務執行の適正等を確保するための体制の大枠。大会社の取締役会は決定義務を負う(362条4項6号・5項、施行規則100条)。
    J-SOXジェイソックス
    金融商品取引法24条の4の4に基づく内部統制報告制度の通称。有価証券報告書提出会社のうち上場会社等が対象で、会社法上の基本方針決定義務とは別の制度。
    決算公告けっさんこうこく
    定時株主総会後に貸借対照表(大会社はP/Lも)を公告する義務(440条1項)。有報提出会社は適用除外(440条4項)。
    連結計算書類れんけつけいさんしょるい
    会社法上の連結ベースの計算書類。大会社×有報提出会社は作成義務あり(444条3項)、会計監査人設置会社は任意作成が可能(444条1項)。
    減資げんし(資本金の額の減少)
    株主総会の決議(原則は特別決議。447条1項・309条2項9号)と債権者保護手続(449条)を経て資本金の額を減少させること。欠損填補や資本構成の見直しなどの目的で用いられる。均等割などの税務効果は税法上の資本金等の額で判定するため、減資だけでは確定しない。
    債権者保護手続さいけんしゃ ほごてつづき
    減資等の際に、債権者へ異議申述の機会を与える手続。官報公告と個別催告、1か月以上の異議申述期間が必要(449条)。
    有価証券報告書ゆうかしょうけんほうこくしょ(有報)
    金融商品取引法24条1項に基づき提出される開示書類。提出義務は上場(1号)だけでなく、過去の募集・売出し(3号)などからも生じ、上場廃止だけでは消えない。この提出義務の有無が、決算公告・連結計算書類の扱いを左右する。
    借入かりいれ
    金融機関等からの資金調達。MBOではLBO(レバレッジド・バイアウト)の形で、買収資金の多くを借入でまかなうことが多い。
    条文早見表
    条文内容登場する章
    会社法2条5号公開会社の定義第Ⅰ部-1
    会社法2条6号大会社の定義(資本金5億円以上または負債200億円以上)序章
    会社法2条24号「最終事業年度」の定義(計算書類の承認を受けた直近の事業年度)序章
    会社法327条3項会計監査人設置会社は監査役を置かなければならない(委員会型を除く)第Ⅱ部-1
    会社法327条5項指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の会計監査人設置義務第Ⅰ部-1/第Ⅱ部-1
    会社法328条1項大会社×公開会社(委員会型を除く)は監査役会+会計監査人が必須第Ⅰ部-1
    会社法328条2項非公開の大会社には会計監査人が必要。監査役型では監査役も必要(327条3項)第Ⅱ部-1
    会社法389条1項監査役の会計限定は、監査役会設置会社・会計監査人設置会社には認められない第Ⅱ部-1
    会社法362条4項6号内部統制システム整備の決定は取締役会の権限事項第Ⅰ部-2/第Ⅱ部-3
    会社法362条5項大会社の取締役会は内部統制の基本方針を決定しなければならない第Ⅰ部-2/第Ⅱ部-3
    会社法施行規則100条内部統制の基本方針の具体的項目(5つの体制)第Ⅰ部-2
    会社法440条1項決算公告義務(大会社はB/S+P/L)第Ⅱ部-4
    会社法440条2項・3項官報・日刊紙は要旨公告で足りる/ウェブ開示による公告の代替第Ⅱ部-4
    会社法440条4項有報提出会社は決算公告義務の適用除外第Ⅰ部-3
    会社法444条1項会計監査人設置会社は連結計算書類を任意作成できる第Ⅰ部-4/第Ⅱ部-5
    会社法444条3項大会社×有報提出会社は連結計算書類の作成義務あり第Ⅰ部-4/第Ⅱ部-5
    会社法444条4〜7項連結計算書類の監査・取締役会承認・株主への提供・総会報告第Ⅱ部-5
    会社法309条2項9号資本金の額の減少の特別決議と、定時総会・欠損額以内の場合の例外第Ⅱ部-2
    会社法447条1項資本金の額の減少(株主総会決議。原則特別決議:309条2項9号)第Ⅱ部-2
    会社法447条3項株式発行と同時の減資で資本金が減らない場合は取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)第Ⅱ部-2
    会社法449条資本金の額の減少に伴う債権者保護手続第Ⅱ部-2
    会社法939条・940条1項2号公告方法の定め/電子公告の5年間継続掲載第Ⅱ部-4
    金融商品取引法24条の4の4第1項内部統制報告書の提出義務(有報提出会社のうち上場会社等が対象)第Ⅰ部-2/第Ⅱ部-3