金商法24条1項は、有価証券報告書の提出義務が生じる有価証券を号ごとに列挙している。上場していた頃のみなと精機株式は、1号(金融商品取引所に上場されている有価証券)に該当していた。
一方、みなと精機がIPOの際に募集・売出しについて有価証券届出書を提出した株式は、上場廃止によって1号・2号に該当しなくなった後、3号(募集・売出しに際して発行開示の規定の適用を受けた有価証券)に基づく提出義務が残り得る。3号そのものには「現在の株主数が一定数以上」という要件はない。したがって、スクイーズアウトで株主が減っただけでは、3号の義務は自動的には消えない。
3号の義務から外れる道は24条1項ただし書に用意されており、代表的なものは次の二つである。
- 300名経路:発行者が報告書提出開始年度の終了後5年を経過しており、当該事業年度末およびその開始日前4年以内に開始した各事業年度末の所有者数がいずれも政令で定める数(300名)に満たず、かつ内閣総理大臣の承認を受けた場合(対象有価証券の種類などの条件もある)
- 施行令4条の経路(本ケースは所有者25名未満):清算中である、相当期間事業を休止している、または所有者数が25名未満であるなど、政令・府令で定める事情があり、内閣総理大臣の承認を受けた場合(金商法施行令4条2項3号、企業内容等の開示に関する内閣府令16条2項)。人数の算定時点(同府令16条3項)、申請日と対象年度の関係(施行令4条2項)、承認の条件となる書類の提出(同条3項)にも定めがある
MBO後のみなと精機は、スクイーズアウトにより株主が受け皿会社1社になるため、25名経路で承認を申請することが実務上の典型である。ただし、どの経路を使えるかは株主数の推移や届出書の提出歴によって変わるため、自社の経路は法務・証券代行と確認する。承認の権限は内閣総理大臣から金融庁長官に委任されている(194条の7)。
つまり、「上場廃止=有報提出義務の即日消滅」ではない。免除の承認は「どの事業年度に係る有報から提出しなくてよいか」を対象として与えられるため、440条4項の適用除外がいつ外れるかは、承認日そのものではなく、承認の対象となった事業年度と、その事業年度の定時株主総会の時点を見て確認する。ここを承認日だけで判断すると、決算公告をすべき年度を一年間見落とす、あるいは逆に不要な年度に公告してしまうことになりかねない。
会社法440条1項・4項
金融商品取引法24条1項
金融商品取引法施行令4条
企業内容等の開示に関する内閣府令16条